●心身歯科医学・豊福先生の研修会

本HPを立ち上げてから、明らかに「歯科心身症」に関連した患者さんの来院が増えてきました。

皆さん、辛い症状をお持ちにもかかわらず、「どこの歯科医院に言っても原因が分からない」「気のせいだと言われた」「そんな症状聞いたことない」「疲れているのでは?と言われた」「ストレスでしょう、と言われた」というふうにおっしゃいます。きっと「何とかしてほしい」というお気持ちで、インターネットで検索されるのだと拝察します。
そしていつの間にか「歯科心身症」というのがあるのだということを知り、「歯科心身症」で検索した場合、おそらく常に上位に表示されるのは「踊る歯科心身症ネット」というページではないでしょうか?


私は当院に来院された患者さんから「踊る歯科心身症ネットの先生に診ていただこうと思ったのですが、お茶の水だと遠くて」とか「踊る歯科心身症ネットの先生は、予約が一年先になってしまうとのことだったので」などということを伺いました。


やっと「歯科心身症」にたどり着いたのに、、、、、という想いの患者さんが「踊る歯科心身症ネット」のずっと下の方に(笑)表示される私のクリニックに気づき、連絡をくださる、、、のではないかと。
でも、私はそれで全然okです。
後述いたしますが、まだまだこの分野、歯科医の間でも知られていないようなので、ご自分の訴えを理解してもらえずに悩まれている患者さん、苦しまれている患者さんはかなりいらっしゃるはず。
少しでも私がお役にたてれば、という気持ちでおります。

8月初旬、「踊る歯科心身症ネット」の主、東京医科歯科大学歯科心身医学分野
教授である豊福明先生の講演会に出席しました。
私と豊福先生の出会い(一方的な出会いですが)については長くなるので
、本ブログの最後に書きました。
この日の講演会は、一般的な歯科医に「歯科心身症」について、言わば「こういう
世界もあるんですよ」と紹介するようなある意味ビギナー向けの内容では
あったのですが、私自身の知識の整理ができ、「歯科心身症」を学び実践してゆく上で
“覚悟しなければいけないこと”を再認識できました。また、豊福先生が、どうして
「歯科心身症」という分野に進まれたか、どのような出会いがあったのかという
お話しは初めて伺ったので、とても面白かったです。二年前に東京医科歯科大学で開かれた豊福先生の研修会で頂いたテキストを持参した私は、この二年間の間に出会った
歯科心身症領域の患者さんのことを思い出しながら、そこに新しく得た知識を
書き足していきました。
「精神科医の先生に紹介しても、先方からは“精神科的には問題ありません”という
報告書がくるだけのことも多い。でも患者さんは苦しまれている、、、、だからやはり歯科医が勉強して治療しなかればいけないのです」とおっしゃる豊福先生。
もちろん精神科医に依頼した例も示されており、要するに“それを見極める眼”が
大切であるということだと私は認識しました。
私の恩師であり口臭治療を専門的にされていた川俣浩先生との共同研究でも
分かったことですが、口臭を訴える患者さんのうち、かなりの割合で実はメンタルな
問題をお持ちの方がおられます。でも、それを単に“精神的問題”として、
精神科医に丸投げしても上手くいかないことが多く、
結局患者さんが宙ぶらりんになってしまうこともあります。
ですから、後述するようなリエゾン診療という診療形態があることを頭に
置きながらも歯科医がしっかり対応することが患者さんのお役にたてるのだと
私は考えています。それと、専門的な知識と経験をお持ちのドクターとのネットワークを持つことも大切だと自分の経験から思います。
その意味でも、短い時間でしたが豊福先生と個人的にお話しできたことが
とても意義深かったと感じ、ありがたく思いました。
また、講習会に同行された豊福先生門下の大学院生である梅崎先生とお知り合いになれたことも、うれしかったです。(またひとり、気軽に質問できる若いドクターをみつけた!)

講演会の最後には、出席者との質疑応答がありました。
ここで強く感じたことは、「ああ、あれだけ歯科の専門誌にこの分野のことが
書かれているのに、まだまだ一般的な歯科医はご存知ないんだなあ」ということ
でした。まあでも、毎日毎日目を通さないといけない書類、手紙、歯科医師会からの印刷物、そして何冊かの学術雑誌、、、、読んでいないものが院長室に
山と積まれてゆく、、、、やっとのことそれらを読む時間を見つけたら、まずは
自分の関心のある記事や論文から読むのは当然のこと。
それぞれのドクターの持つ知識に、分野によって濃淡ができてしまうのは
現実的には仕方ないことだと、自分のことを振り返っても思います。

だからこそ、藁をもつかむ気持ちで私のクリニックに連絡をくださり、
多くの場合、かなり遠方から来院される患者さんには自分の持てるもので
全力投球し、私自身で解決できない場合でも、それを改善してくれそうな
ドクターに助言を仰いだり、実際に診療していただけるようお願いするのも
私の役割だと感じています。

まだまだ勉強していかないといけませんが、興味のある、そして自分の
使命だと感じられる分野の勉強は楽しいです。
そして、それが少しでも患者さんのお役に立てた時の「よかったなあ」という
気持ちは歯科医冥利に尽きると言えます。

ご自分の症状が「歯科心身症」ではないかと悩まれ、苦しまれている患者さんが
おられたら、お気軽にご連絡いただきたいと思っています。

さてでは最後に私と豊福先生の一方的な出会いの物語を記して今回のブログを
終わります。

「踊る歯科心身症ネット」を主宰されている東京医科歯科大学歯科心身医学分野
教授の豊福明先生の学会発表を初めて拝聴したのは6~7年くらい前、当時はまだ会員になっていなかった「日本歯科心身医学会」の年一度の大会に出席した時ではなかったかと思います。

私自身は、かなり以前から(もしかしたら歯科大生だったころから)
精神医学に興味があったことは本HPの「歯科心身症について」(リンク)にも
ちょこっと書きましたが、まさかそれが自分の診療に深く関わってくるとは
10数年前までは、ほとんど考えていませんでした。
そんな私を大きく変えてくれたのが、私の同級生で現在は神奈川歯科大学咬み合せリエゾン外来教授の職にある玉置勝司先生らが始めた精神科医とのリエゾン診療(歯科医師と精神科医が同時に患者さんを診察する)
という診療形態とそれに関連する研修会でした。中でも北里大学医学部精神科教授の宮岡等先生のお話や歯科専門誌での論文は衝撃的でした。
精神科医とのリエゾン診療を推進している玉置先生(元々は、“咬み合わせ”がご専門)や、
玉置先生とも一緒に仕事をされている歯科心身医学分野の著名ドクターである和気裕之先生の研修会や著書で勉強した私は、そうした流れの中で自分の「歯科心身症観」を築いてきました。今現在も、玉置先生や和気先生に相談にのっていただくことがあります。

3年前に、自分自身で学会発表する機会があり、その準備のために入手できるかぎりの「歯科心身症」に関する文献を読んだ際に、最初は若干の違和感を持って
出会ったのが豊福明先生の論文でした。「一般医科の“心身症”の概念を歯科にあてはめるのでなく、歯科独特の“歯科心身症”というものがある」「精神科医に紹介しても、結局解決せずに患者さんが途方にくれることも多い。歯科心身症は歯科医が
解決すべきである」、、、、、、そういう考え方もあるのかと当時は感じました。
そして、平成21年9月に、東京医科歯科大学で開催された豊福先生の研修会を
受講して、先生の“真意”に触れることになったのです。


 「なるほど、そういうことだったのか」
 「たしかに精神科の先生に紹介しても、先方は精神的には問題なし
  “歯科の問題”ですとなるケースはあるよなあ」
 などなど、納得の内容でした。


リエゾン診療の意義や必要性は充分認識した上で、でも、私のような開業医が精神科の先生と一緒に(つまり、患者さん、精神科医、私が同席して)診療するなんてことは現実的にはなかなか難しいわけですから、患者さんのことを考えると、歯科医である私がこの分野をもっともっと勉強してーもちろん歯科医としての限界や立場を逸脱することがないことは言うまでもありませんーいかないといけないことを痛感しました。
そこから手元にあった豊福先生の書かれたものを読み直しましたところ、私が若かりし頃にお世話になった岡山大学医学部脳代謝研究施設で学び、興味を持った脳の機能にも言及されており、以前にも増して豊福先生のおっしゃることが自分の臨床と結びついてきた気がしているのです。

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コメント: 2
  • #1

    木村 カヨ子 (木曜日, 06 10月 2011 01:34)

    はじめまして。私は非定型顔面痛で丸3年も豊福先生の所に通っている者です。歯科治療がきっかけで顔面痛になってしまいました。
    3年も通ったなんて信じられない気がしますが、豊福先生はいつも笑顔で迎えて下さるので気が付いたら3年がたってしまっていました。今では症状は殆どなくなっていますが、先生には歯の相談などもすると、すぐレントゲンを撮って診てくれたり本当に親切にしていただいています。
    私の町には歯医者さんがたーーーくさんあります。でも清水先生のような歯医者さんはいずこに。
    うちの近所にも先生のような歯医者さんがいればいいのにと、もっか歯医者さん難民の私です。

  • #2

    shimizu-shika (水曜日, 12 10月 2011 22:11)

    木村様、初めまして、私は清水歯科院長の清水です。

    コメント拝読いたしました。どうもありがとうございます。
    返信が遅れてしまい申し訳ありません。

    3年も豊福先生のところに通われているとのこと。
    それ以前の、症状がとれない期間もあったでしょうから、
    長い間つらい思いをされていたことでしょう。
    大変でしたね。

    でも、豊福先生に出会えて本当によかったですね。
    「今では症状はほとんどなくなっています」とのことですから、
    豊福先生の的確な診断および治療に、
    木村さんご自身の治癒能力が応えたのでしょう。

    日常的な(つまり、ちょっと歯がかけたとか、詰め物がとれた程度の)
    口腔内の問題で東京医科歯科大学に通院するのは、
    なかなか大変でしょうから、お近くに木村さんの今までの病歴や治療歴、
    特に非定型顔面痛について
    理解してくださる歯科医が見つかるといいですね。

    私でよろしければ、いつでもお気軽にご相談ください。
    それでは、失礼いたします。
    どうぞお大事に。