学校歯科医と養護教諭との勉強会

9月6日(木曜)に、毎年恒例となっている神奈川区歯科医師会主催の「学校歯科医と養護教諭との勉強会」が開かれました。

平成21年より、同歯科医師会で学校歯科委員を仰せつかっている私はもちろん出席しました、というより会場設営他の雑用係をしていました。

この日ご講演をされたのは、神奈川歯科大学小児歯科学教授の木本茂成先生、同窓で私の2つ下の学年、つまり後輩なのですが、まあご立派になられて、物腰柔らかくしかも内容も濃い素晴らしいご講演でした。

 

さて、私があらかじめ木本先生に訊ねておいた質問を含め、この院長ブログをご覧になっている方々に有益だと思える情報をランダムに書きたいと思います。

 

前回予告した「歯科医にとって経験とは」という壮大なテーマは、ひとまず忘れてください。なんだかどこかの政治家のようですが、、、、ははは。

●小児生活習慣病について。


 成人病型糖尿病、虚血性心疾患、消化性潰瘍といったかつて“成人病”の代表として挙げられた疾患が、既に小児期に現れているお子さんがいらっしゃる。
また、なんと動脈硬化の初期病変(動脈の内側にコレステロールなどの脂質が蓄積したアテローム変性という状態)が10代の小児の98%!!!にみられるというデータがあるそうです。更に、生活習慣病の危険因子が既に小児期にみられるお子さんもおられるそうです(小児肥満、小児高脂血症、小児高血圧)。

小児肥満は遺伝的要因およびライフスタイル(身体活動、過食、早食い、長時間のテレビ視聴、睡眠)と関連があるという2004年アメリカでの論文があるそうです。


●小児生活習慣病の原因については多くのことが考えられるのですが、、、、


最近のこどもの生活スタイルとして、塾通いで勉強に生活時間を費やし、自由に遊ぶ時間がないことから運動不足になっている、勉強やテレビゲームによる夜型の生活習慣の傾向、大人と同じ生活時間のため、夜更かしによるストレスも大人並みになっている、夜遅くまで起きているために夜食が欲しくなり、スナックやソフトドリンクをとる、、、、といったことがあげられるとのこと。

●「食後すぐは歯を磨かないほうがよい」ということをテレビや本で読んだが本当かというご質問を私自身が患者さんから受けました。

 

木本先生にそれについて伺ったところ、やはりそうした質問は大学にも寄せられているそうで、小児歯科の学会でもそれについて見解を出すべく議論をされたそうです。


細かい説明は省きますが、「食後すぐは歯を磨かないほうがよい」という内容のテレビ番組が放映され、そこに出演していた某歯科大教授がそれを否定しなかったため、その番組をきっかけにしてそのメッセージが広く流布されてしまったらしいです。


そして、その「食後すぐは歯を磨かないほうがよい」という意見の根拠になった論文は2004年に発表された論文なのですが、かなり偏った内容の論文だったようです。

(どのように偏っていたのかについては、とても専門的になるので、ここには書きません。私のクリニックの患者さんにはいつでもご説明致しますので、ご質問ください)

 

ということで、やはり食後は(別にすぐでなくても)歯を磨き、食べ物が歯の溝や歯と歯の間に停滞しないようにするという従来の虫歯予防に何ら変更は無いということで良いと木本先生はおっしゃっていました。

ただ、私自身の町医者としての実感として、酸性度の強い飲食物を摂取したあとに、ゴシゴシと歯ブラシするのは、おそらく歯をすり減らすし、知覚過敏の一因になると感じています。確固たる実験データに基づいたものではないですが、酸性度の高い飲食物のあとには、水でよい(のではないかと思いますが、これはいずれ専門家に聞こうと思っています)のでブクブクうがいをしてから歯を磨いたほうがよいと思います。

また、これも私のクリニックに来院された患者さんから寄せられた
「歯の表面が、虫歯菌が作った“酸”によって溶かされるのであれば、アルカリ性食品である梅干しを食べることで“酸”が弱まるのか」という質問に関しては、こう考えます。


梅干し、黒酢、、、、アルカリ性食品だと言われていますが、これはれっきとした酸性食品です。よって、歯を溶かす方向に働くことはあっても、虫歯予防にはつながりません。

以上、木本先生のご講演および質疑応答のほんの一部をご紹介しました。

さて、この原稿を書きながら横目で見ていた早朝のNHKニュースで、ニューヨークで炭酸飲料販売制限の法的規制が行われることを知りました。


ニューヨーク市民の(アメリカ国民だったかもしれません)炭酸飲料の年間消費量は170リットル!現在、ニューヨークの映画館で売られている炭酸飲料のサイズは小さいサイズで950ml、大きいサイズは1500ml !!!。

サイズによって値段はあまり変わらないので、多くの客は1500mlのほうを買って、映画を見ている間中、ちびちびと飲んでいるそうです。

実際、1500mlのドリンクのカップを手に、我々が通常目にするポテトチップスの袋の3倍はありそうな袋に入ったポップコーンをボリボリ食べながら映画を見ている観客たちの映像が紹介されました。

 

アメリカ人(ニューヨーク市民だったかも)の三人に一人は肥満、肥満が原因となっている病気関連の経費によってニューヨークの財政が危機にひんしているために、規制をすることになったようです。

当然、炭酸飲料の業界や映画館(収入の30%くらいを占めるそうです)から猛反対にあいましたが、結局可決されニューヨークの映画館やレストランでは、来年4月だったかからカップのサイズは最大470mlに規制されるそうです。

木本先生も、アメリカの子どもはアイスクリームを一度にものすごく大量に食べる(例えばレディーボーデンの大きいカップのを、一度に平らげる)そうで、アメリカ留学時に非常に驚いたとおっしゃっていました。

あ、もうひとつ思い出しました。


神奈川歯科大学は横須賀ベースキャンプのすぐ近くにあるので、そこに住んでいる子どもたちが同歯科大大学病院の小児歯科に来院されることが多いのですが、その子どもたちの歯は、削ってみると非常に硬いそうです。

 

歯が硬くなった原因は、ベースキャンプ内は上水道にフッ素を添加しているからで、そのことからも毎日微量にフッ素を摂取することが虫歯に抵抗性のある歯を作ることにつながっていることが分かります。
(ちなみにアメリカでは多くの州で上水道にフッ素が添加されており、住民がフッ素入りか、入っていないものかを選択できる州もあるらしい)


当院の待合室に置いてある私の自作プリントのひとつに「フッ素の具体的使用法」について書いたものがあります。来院した際には、ぜひお持ち帰りになって読んでいただきたく思います。

では本日はこれで「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」(映画館の話題から淀川長治さんを思い出してしまいました)。

 

オフコースを思い出していたら、
「さよなら~、さよなら~、さよなら~ああ~」と書いたでしょうか。
 どうもでいいですね。失礼いたしました。


次回こそ「歯科医にとって経験とは」について書くつもりです、、、今のところ。