フィンランドから思春期の少女来る

私にはフィンランドのミュージシャンの友人がいる。その15歳のお嬢様がお母様と
一緒に間もなく日本に来る。

彼女は日本語と日本文化に興味があり、フィンランドでは珍しいらしいが日本語を勉強しているとのこと。日本を訪れることは、長年の(といっても、最長15年だろうが)彼女の夢だったのだそうだ。

「私にできることだったら手伝うよ」とそのミュージシャンに伝えたところ、次々にそのお嬢様から質問が来て、この二週間ほど“清水旅行代理店”になってしまっている。浅草、スカイツリー、ソラマチ、エプソン品川アクアスタジアム、江戸東京博物館、巣鴨にある温泉、鎌倉、ジブリ美術館、藤子不二雄美術館、岡本太郎美術館、、、、もう東京観光、何でも来い!状態である。さすが15歳で、「奈良への日帰り旅行を考えている」などと恐ろしいことを言う(勿論、それは止めさせた。その代わりに私が鎌倉を提案した)。
 彼女とやりとりしていて驚いたのは、「本当にこの子15歳?」と思うくらいに情報の整理が速く確実なことだ。こちらから次々に断片的に送る情報を瞬く間に整理して的確に疑問点を返信してくる。

私の家族にそれを話したら
「ああ、だってフィンランドは教育水準が世界でもトップクラスらしいものね」と
言われた。そうだったのか。
 昨日の新聞に、倒産したフィンランドのハイテク企業ノキアのことがかかれており、日本企業との違いに感心したのであるが、その記事にフィンランドの教育について書かれていた。ノキアに勤めていた43歳の男性は子供が10人もいる。その彼が言う(以下、記事より引用)
“「日本の人からはよく、金持ちじゃないと教育費が大変だろうと言われる。でも、
ここは全部タダだから」学費は大学まで無料、しかもその教育内容は国際学習到達度調査(PISA)で上位を占める水準だ。もちろんこれは、消費税率24%など重い国民負担があるからできることだ。”

なるほどね。これについて、どうこう書くほどの知識は私にはないが、
そうかあ、「ゆとり教育の失敗」とか言っている我が日本もどうにかしないと
いけないなあ。
香山リカさんが「日本人はなぜ劣化したか」というような本を書かれていたし、最近、阿川佐和子さんが色々なところで最近の歌謡曲の歌詞はどうしてこんなにつまらないのかと書いているし、彼女の番組「さわこの朝」に翻訳家の戸田奈津子さんが出演した時、最近の若い人は日本語を知らないので、映画会社のひとに「もっと簡単な言葉を使わないとダメ」と言われるてなことを語っていた。
なんだか、ちょっと情けない。

 さて、少し前になるが、個人的には「情けないなあ」と感じる我が歯科業界についての記事が新聞に載った。しかも、一面に大きく。
皆さんもご覧になったかもしれないが、歯科医院のポイント制についての記事だ。
その是非を語るほどの知識も無ければ、立場でもない。
概ね、以下のようなのが歯科医院のポイント制だろうと思う。
(ご興味のあるかたは「歯科医院」「ポイント制」で検索してみると色々と表示されるはずだ)
「患者さんに、指定されたウェブサイト上に自院についての口コミを書いてもらうように依頼し、その対価としてその患者さんに何ポイントかをあげる。そのポイントが貯まると治療費がポイント分割り引かれる。あるいは商品と交換できる」

実際、こうした営業の勧誘は私のクリニックにも来る。
「患者さんを集めるための一番の決めては口コミです!
清水先生の治療についての口コミを月々●●円で▲▲回、
医療機関検索サイトに当社で書き込みます」てな電話だ。

まあ、その電話の主も日々の糧を得るために、恐らくは掛けたくもない
営業電話を掛けているのだろうが、私にとっては迷惑なだけだ。

ーーーーーーー以上を書いたのが2月の前半、アップロードをするのを
忘れていましたーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、今はもう3月。
フィンランドのお嬢様も無事帰国。
なかなか大変ではあったが、私も楽しかった。
彼女が映画で見た「忠犬ハチ公」の像を見たいとのことだったので、
皆様もご存知のとおり、リニューアルによりものすごく複雑になった渋谷駅内の迷路をくぐり抜け、駅員さんに「ハチ公を見たいのですが」と、まったくお上りさんのような質問をして辿り着き、そういえば、改めてハチ公を見たのは初めてかもしれないと感じた次第。
横浜観光は私の家族も一緒に、ベイクオーターから舟で山下公園>中華街(刀削麺他、ゲーセンで皆でプリクラをとる、、、私はゲーセンというところに、
こんなにたくさんのプリクラの機械があることに驚いた。私の家族が“目をパッチリさせるための操作”をしたため、私の目までギャル化してしまった!)>東横線でみなとみらい駅>カップヌードル・ミュージアムにてマイ・カップヌードルを作る>横浜に戻って日本食という行程。
普段、逞しい鹿の肉が食卓にど~んと置かれている彼女たちにとって、少量のお料理が次々に運ばれてくる京都的な懐石料理はとても珍しかったようだ。
引き上げ湯葉、田楽、茶碗蒸しなどのテイストは「strangeではないがnew」だ
そうで、三時間あまりもその日本料理店で過ごし、改めて食文化の違いに深く感じ入った夜であった。

どうやら彼女は帰国後、更に日本にハマってしまったらしく、交換留学生になることを目標に日本語の勉強に励んでいるらしい。
私が数冊プレゼントした「漫画・日本の歴史」には“ふりがな”がついているので、
とても読みやすい、とメールをくれた。
日本で食べたものでは「吉野家の牛丼、ラーメン、清水さんが勧めてくれた“天丼てんや”がおいしかった」とも書いていた。
私も、少しでも彼女たちを理解したくて今年に入ってから、フィンランドについての本を何冊か読んだ。とても勉強になった。

歯科医というのは、職人的なイメージがあるかもしれない。
事実、自分で詰めたプラスティックを色々な方向・角度から見てみて、「もうちょっとここにプラスティックを足したほうが光を自然に反射するな」とか、
入れ歯の歯肉に接する部分を指で撫でてみて、「うん、これでよし」と感じるなど、職人的な部分もある。そうした技術を磨くことは大事だし、
患者さんの「あの先生上手だよ」という評価はとても大切だ。
しかし、それだけではないのではないか。
開業医即ち臨床家は“ヒト”を相手にするのであるから、歯科の専門の本は勿論、人間についての本を多く読み、また日本の文化や歴史について学ぶ必要がある。患者さんという“人間”に起こっていることを、基礎科学の面からも(つまり、生理学的に何が起こっているのかを知ることからも)社会科学の面からも捉える必要があると思う。その観点から、今回の15歳の多感なお嬢様との出会いはとても大切な異文化交流であり、人間理解を深める有意義な日々であった。